定義
エージェンティックAIは、「AI技術を用いて、人間のように目的を認識し、自律的に行動する機能を備えたシステム」として定義される。この概念の核心は、従来のAIが人間からの明示的な指示に対して受動的に応答するのに対し、エージェンティックAIは与えられた目標に向かって能動的に計画を立て、必要なアクションを自律的に実行する点にある。
学術的には、エージェンティックAIは「エージェント」(Agent)の概念に基づいている。エージェントとは、環境から情報を受け取り、それを基に自律的に判断・行動を行う主体を指す。コンピューター科学の分野では、従来からソフトウェアエージェント、知的エージェント、マルチエージェントシステムなどの研究が行われてきたが、エージェンティックAIはこれらの概念を大規模言語モデル(LLM)や生成AI技術と組み合わせることで実現された新しい形態のAIシステムである。
エージェンティックAIと類似する概念として「AIエージェント」や「自律型AI」があるが、エージェンティックAIはより包括的な概念として位置づけられる。単一のタスクを実行するAIエージェントとは異なり、エージェンティックAIは複数のタスクを連携させ、状況に応じて戦略を修正しながら最終目標の達成を目指すシステム全体を指している。
専門分野では、エージェンティックAIは「計画立案」「推論」「ツール活用」「自律的意思決定」の4つの主要能力を備えたシステムとして特徴づけられる。これらの能力により、従来の定型的な自動化では対応できなかった複雑で動的な業務環境においても、柔軟かつ効率的な処理を実現することができる。